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【小説】銀河鉄道③
翌日、その話を同僚にしてやったら

同僚は 声を上げて笑った

「なにお前、本当に行ったのかよ。信じらんねぇ。
あれはな、インターネットの地方の掲示板に書かれた下らない噂だったんだぜ?
歌舞伎町の地下室にある秘密の牢獄や丘の上の巨大な死の桜。よくある話さ。]
それで、実際に店、あったのか?」

信じられないのはお前だよ。
そう思ったが、僕は 見てきたことを 丁寧に話してやった

同僚は 半信半疑だったが、面白そうに僕の話を聞いていた

「へぇ・・・。そいつに乗ると死ぬって事か。
そこまでは書いてなかったな。
おもしろそうじゃん。俺も行ってみようかな。」

「ダメダメ。きっと追い返されるよ。」

「しかしまぁ。乗る資格とか。そんなんあるのかねぇ。」

僕らは その店の話を 不思議とそれ以来する事はなかった

刺激の無い日々に 少しだけ刺激をくわえてくれたけど

その刺激は あっという間に風化して

いつものように なだらかな 砂の斜面に練りこまれては

消えていった


一番最初に 話したかもしれないが

僕は

毎日 同じ列車に乗り

同じ 顔ぶれと共に 

少しきつめの空間に揺られながら 嫌な過去を眺めるような生活を

繰り返し送っていた

僕の人生は ある時点から明らかに空っぽになっていた

朝起きると

そこには 何も無い 平たんな 灰色の 地面が広がってるだけだ

何か変えようと色々試してみるものの

なにかしら そこには 無理矢理な 気持ちがあった

たとえば それはボコボコになった 道を 埋めるような 事だった

そして それは きっと死ぬまで続くんだ

僕は その 銀河鉄道という出来事さえも

どうせ、形の違う 穴埋めのパーツなんだと

決め付けて それ以上近づく事をしなかったのだろう





僕が 銀河鉄道の切符売り場に行ってから

また5年が過ぎていた


あの同僚は 地方の営業所に 転勤になったし

僕は あの時よりは 少しは 偉い立場になっていた

だけれど、基本的に変わった事といえば それくらいだ

少しだけ 良いものを たまに食べ

少しだけ良い 服を着ていた





その夜は

また別の同僚の送別会で 少しだけ余計に酔っていた

同僚は 地方へ勤務になるもの

また、同じ東京でも 建物の違う 別の部署へ異動するもの

色々いたが

古くからの仲間は 僕の 職場には ほとんどいなくなっていた


僕も 30歳を迎えていた




気がつくと いつもおりる駅と 違う駅に降りていた

それは 降りるべき駅から 二つ前の駅




そう

あの売り場がある駅だった

降りたすぐには それとは気付かなかったが

しばらく ボーっとしていると

ゆっくりと あぶりだしのように 何かが 頭の中に現れた

そのあぶり出しを 端からなぞる様に 

僕の足は 無意識に 歩き出していた






そして なにか 当たり前のように

その路地の突き当たりにたどり着いていた




そこには

つい 昨日見たばかりのように

鮮明に頭の中にやきつく 小さな店があった

あの時と全く同じかっこうだった

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無題
さあて、ラストどうしようかな(涙)

電車って
普段通りすがる駅も降りてみてみると
風景が全然違って見えるよね。

…降りるつもりなかったんだけどなぁorz
  • 和尚 さん |
  • 2009/03/22 (01:02) |
  • Edit |
  • 返信
>re
>和尚さん
電車の窓から見てた景色を
実際間近で見ると
意外とスケールが小さい 変哲もない風景だったりするよね。
  • NONAME さん |
  • 2009/03/26 (22:06) |
  • Edit |
  • 返信
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