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カテゴリー「小説」の記事一覧
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結局のところ

おやじの病気と。そしてそれについて考える家族。

みんなどこか、直視できていなかったんだろう。

おやじは自分が末期である事を受け入れず

僕を含めた家族は。

おやじが確実に死ぬという事実を受け入れなかった。

だから。

こんなにもみんな自分の事ばかり考えていたんだろう。


でなければ・・・。



あの日も僕は大学の講義なんてものを受けてなかったんだと思う。


父について話す事は、無駄なのでやめておく。

今は人が死ぬということについてだけ話したいと思う。






父のそんな知らせを聞いてまもなく、僕は下宿の小さな部屋に敷いた万年床の上に横たわり、煌々と光る電灯を見ていた。


僕のこの下宿の部屋の電灯は、ひっこしてから一度も替えていなかった。

だけど、それは一向にきれる事はなかった。

そこに電灯の意思があるのだろうか。

それとも、ただの物理現象の偶然の重なりなのだろうか。



最初に言っておく。

この文章の題名はこうだ

「電球の割れた日。」

この長くきれる事のない電球がきれる日の事をかきたいと思った。

それが父の最後との関係を作りたいわけじゃない。

だけど、きっとこの電球は、このまま1年灯さなくても、父は死んでいくのだろう。

きれる事のなかった電灯はその後、灯せば光を放つんだと思う。

生きる。生きないというのはそういう事だと思う。


そういった意味では、電灯は楽だ。


ある日、僕は久しぶりにその下宿に帰ってきた。

長い病院通いからにわかに解放されて一息つくためだ。

電灯のスイッチを入れると “パン”と軽い音がして、そして電灯はつかなかった。

僕は思わず笑った。


父は末期のガンだがまだ生きている。


電灯は今日が最後の日だなんて 思ってもみなかっただろう。

そういった意味では 人間は楽だ。



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