忍者ブログ

   
カテゴリー「小説」の記事一覧
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

バイオリンの響き

太鼓の音色

笛の音

踊りまわる 人々の雑踏

ここは 船の上だ

船上のお祭りだ

人々は 酒に酔い

音楽に酔いしれ 天を仰ぎ 

ふと 今という 時間について 考える瞬間を 生々しく 磨き起こす

さあ

踊れ 歌え

新しい別れだ

さようなら

ありがとう

また 会おう

船は ゆっくりと 沈んでいく

この豪華客船は

目の前に 近づいた 氷山に 気づかずに

衝突して そして いままさに 沈もうとしている

そうしたところ

船沈め屋がやってくる

船との別れを 楽しく過ごさせるのが 船沈め屋の仕事だ

船沈め屋は 船が 沈むサインを受け取ると

驚くほど はやくに 現れて

祭りのしたくをする

その手際に 誰もが 驚いた

大丈夫

船は 沈んでも 船沈め屋が すっかり 安全に 

逃げ出す準備は してくれた

あとは 船が沈むのを 悲しみながら騒ぐだけだ


さんざん 騒いだ 乗客たちは

順々に 船沈め屋が用意した ボートに乗り移っていった

だけど 船に未練がある 数人は

船と沈む事を 選ぶ事もめずらしくない

船の甲板が 最後の一切れになった頃

そういった 人たちは


満面の笑みを うかべて 冷たい海水に 沈んでいく

そして 船が 海底に到達した頃

ガッツポーズを 海面に向けて 突き出して

そして 去っていった

タキシード姿の その 太った 男は

最後に これほどまでの 笑顔を たたえて 死んでいった

船沈め屋は 決してそれを 止めない

船沈め屋の 仕事は

人を 救う事ではなく 人を満足させるためだからだ

だから

みんな 今もなお

安心して この 大きな 海を 航海できるのだと思う


PR
  
過去の小説らは↓↓
忍者アナライズ
■パーペキリンクフリーです
Copyright ©  -- 爆発 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]