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【小説】すなどけい ケース③
目の前に 置かれたカプセルを しばらく見つめていた

赤と白の2色で構成された ありふれた 小さな薬

飲めば 五感は麻痺するが

一切の苦痛もなく死ねるというカプセル

このカプセルの使用が許されるのは

余命1ヶ月以内の 重病者のみだった

病室に置かれた テレビは 

増えすぎた 日本の人口を 他の国に移住させる計画について話していた






時代は 安楽死を超えて、自ら苦しみを”飛び越えて死ねる”ようになった

苦しみを乗り越えて 生きる時代ではなかった

これから はじまるであろう さまざまな苦痛に耐えて 1ヶ月か、それ以上か・・・

行き続けるか、もしくは 今すぐに 薬を飲んで 楽に死ぬか

薬の名前は 「reborn」

「とっとと死んで生まれ変われよ」という意味だ

もっとも、生きる選択をしてからも 苦しければその薬を飲めばいい

だけども この薬の意地悪なのは  生きる選択をした瞬間、

無保険での使用となり、莫大な金額を請求されるという事だ

ようするに、国は この薬の使用を奨励しているという事だった

そりゃそうだ

ちかぢか 必ず死ぬ者に 生きる場所など 無駄でしかたない

金が請求されたって、当の本人は死ぬのだが、もちろんその家族に迷惑がかかるわけだ


さて、改めて僕はこの薬を見つめた

両方の端をひっぱって カプセルを開けると 

きっと 毒々しい色の小さな粒が このトレイの上にばらまかれる筈だ

つい先日、あけてしまった 女性を見たから



結局彼女は 使用をせずに、残りの時間を生きると選択した

当然のように 彼女は 病魔に苦しんでいる

笑ったとこは見たことがない





告げられた

残り時間は1ヶ月

1ヶ月で何ができる?

生きてきた道を思い起こすか?家族と泣くか? 言っても、家族は 親父一人だけど。

つまみあげて 窓から挿す 日差しに照らしながら 悩んでいるところに 担当医がやってきた


「やあ 鈴木さん。調子はどう?」

「めまいがひどいです。」

「そうか・・・。言い方は悪いが順調だ。」

「・・・・・・」

「それで?どうするね?」

「この薬。本当に楽に死ねるんですか?」

「死ねる。それは保証するよ。悩んでいるのかい?」

「だって。これを飲めば あっけない程 一瞬で 今まで生きてきた歴史に終止符をうつ。
そりゃ悩みます。」

「すまん。そうだな・・・。じゃあこうしよう。」

「・・・・」


担当医は ポケットから10円玉を持ち出した

「いいかい?こっちが 表、こっちが裏だ。 表が出たら薬を飲む。裏がでたら飲まない。
迷ったときはこれに限る。」

「え?」

「迷ってるんだろ?」

「そ、そうですが・・でも・・・」

「すべては神のおぼしめし。さて 投げるよ?」

「いや!ちょっと!」

言うが早いか 10円玉は 空に舞った

そして 担当医の手の甲にポトリと落ちて 担当医は反対側の手でそれを押さえつけた


「さて。どっちかな。」

「まってください。それじゃあ あんまりだ。」

「あんまり?何が?」

「運じゃないですか。そんなの。」

「人生なんてそんなもんさ。」

担当医は 僕の話も意に介さず手のひらを持ち上げた

10円玉は裏側だ

僕は 安堵の 声を漏らした

「なんだ。やっぱり無理か。」

担当医は 僕の手から カプセルを取り上げた

「君には飲む資格はないな。残り一ヶ月。がんばろう。」

そういうと 担当医は足早に 部屋を出て行った

担当医はきっと 僕の表情を見て言ったのだろう


かくして

僕は 余命を 病気と戦う事となった

そんな僕に 薬をのまなかった女性が言った


「あなたが後悔するのはこれからよ・・・。」


僕はあわてて 担当医の部屋に駆け込んだ













薬を飲んだ直後に 彼女は言った

「よかった。これでまたベッドが空くわ。」

彼女の胸には 「研修医」とかかれた名札がぶら下がっていた


手のこんだことを しやがるものだ


僕はしびれる体と うしないつつある意識の中

自分が本当は 病気ではなかったのかもしれないと 思った。

増えすぎた人口・・・・か。


まあいいか。











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あけましておめでとうござますー。
新年早々キテるねー。

生ますつもりで死ぬ辺り、
エイズって人減らしの
病気なのかなぁとか思う昨今。

"安楽死"ってあるのかな。
老衰とか睡眠薬とか聞くけど
それも生きる力を奪われての事だし

まぁ、誰も感想述べる事できないけどねー。
  • 和尚 さん |
  • 2009/01/01 (11:50) |
  • Edit |
  • 返信
>re
おめでとうございます!!
以前も書いたけど、エイズとかガンとかって、地球の防衛本能というか、免疫が働きはじめた結果なんじゃないかなとずっと思ってます。

今年もよろすく
うわ
うわこれすごい怖い・・・死んでも幸せだったと思えると常々思っている私でも怖い。
怖くない人は病気だから仕方無いのか。
  • たこ さん |
  • 2009/01/04 (19:53) |
  • Edit |
  • 返信
>re
>ターコはん
人減らし政策が もし始まったとしたらどんな手を使ってくるのだろうとふと考える事が良くあります。
こんな事考える時点で病んでるなTT
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