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【小説】すなどけい ケース②
群れで生きる 巨体の動物がいた

その大きさは 人と比較すると何十人分にもなった

その動物は いくつかの家族が一つになって群れを作っていた

それらは 常に旅を続け立ち止まる事は無かった。

雨の日も風の日も 強く日が照る日も 速度こそ遅かったが ずっと歩き続けていた。




常に先頭を まっすぐ歩いていた 一頭は ある日、先頭ではなく 2番目の位置を

歩いている事に気づいた

そして数日後には3番目、その次の日には4番目と日を追う毎に 群れの列の後ろへと歩くようになっていた

数週間も経てば 列の一番最後だった

それでも その動物は 群れの列についていった

群れの一頭が その動物に 一言話した

「悲しいからやめてくれ。」

最後尾にいた動物は ゆっくりと歩くのを止め 立ち止まった

家族の一人が 悲しそうにその動物を見つめていたが、そのまま群れの列について行き

いつしか 姿が見えなくなってしまった



大きなその動物は 近くの岩場にゆっくりと 腰を下ろした

「わかってはいたさ。」

何度も独り言を言った


群れは旅を続ける

仲間が倒れようと それを止めない。

倒れる仲間を 見たくない



岩の上に一羽の鳥が飛んできた

「お前なにしてやがる」

鳥はキョロキョロとあたりを見回しながら言った

「疲れたんで休んでる。」

動物は答えた

「とりあえず 早く死んでくれ。でないとこっちが死んじまう。」

鳥はくちばしを鳴らした

「せわしい奴だ。まだお前をつぶせる力くらいあるんだぞ。」

「やらねぇくせに」

動物は 少し笑うと 自分の前足を眺めた

ごつごつとした岩のような足

この足で この動物は90年。ただひたすらに歩いてきた。

何のために歩いてきたんだろう。

この大きな体を動かして  なにを目指していたんだろう

動物は 自分が こうやって座った事が 産まれた時以来だと悟った

「どうだ?もうそろそろか?」

鳥はまた くちばしを鳴らしながら 言った

「ああ・・・。疲れた。」

動物は 一つあくびをして 清々しい顔で空を見上げた

「なんだ。いい顔しやがって。」

「案外、目的はこれだったのかもしれないな。」

「木にでもなりやがれ」

鳥は ケタケタ笑った


屍は 骨となり 木にはならずに 砂になった

砂は風に乗り消えていった

動物は 90年 歩き続けてきた事を 最後の最後に満足して 砂になった

そういった意味では 歩くのも悪くはない










 
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休憩はしても
旅し続けるんだねぇ。

病気で一時期歩けなくなったけど
あの時はほんと辛かったなぁ。
  • 和尚 さん |
  • 2008/12/29 (22:45) |
  • Edit |
  • 返信
>re
子供に なんのために生きるの?
とか聞かれると おいしいものを食べるためだよ?と 答えます。
基本 本能。
  • NONAME さん |
  • 2008/12/30 (22:55) |
  • Edit |
  • 返信
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