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【小説】銀河鉄道①

疲れた仕事帰り

誰も一言も発さない

帰宅の電車

ガタゴトと揺られる毎日

僕は 暗い列車の窓の鏡に映る自分の顔をみていた

この東京に越してきて5年になる


だから

彼女が死んで5年になる


僕は まるで 彼女とその名残から逃げるようにして
東京にやってきた

僕は 何日かに一度 この暗闇の鏡の前で あの時の
事故の事を思い出す

もう5年間も それの繰り返しだ

5年間の 後悔の繰り返し

ある意味それは 自分にとっての 抗鬱剤のようなものだった

 


ふと何かを思い出したように
いつも降りる駅の二つ前で降りた

そこは よくある 何の変哲も無い小さな駅

下には大きな道路が通っていて
その上に高架となってそこに在った

駅を降りて しばらく北に道なりに進む

そこでまた
バーで飲んでた時の同僚の言葉を思い出した

 


「おい。銀河鉄道って知ってるか?」

僕は眠たそうに返す

「スリーナインか?宮沢賢治か?」

「ああそうだ。それだ。」

同僚は 一口ウィスキーを含んで続ける

「乗ってみる気はあるか?」

同僚は ”銀河鉄道”について話続けた

僕は、最初 ドラッグか何かの類だとおもっていたが
どうやら違うらしい

なにか 特別な体験をさせてくれる場所なのか・・

同僚ははっきりとは言わなかったが
とにかく、”それ”を紹介してくれる場所だけは
教えてくれた

酔った男の言う事だ

騙されたと思って・・・

ただ、最後に同僚が付け加えた一言が
妙にひっかかった

「行くなら覚悟はしておけよ。」


何が覚悟だ

くだらない


これで銀河鉄道っていう名前のパブだったら
どうしてやろうか

まてよ

覚悟がいるってことは

ゲイバーか何かか?

色々くだらない想像をめぐらしながら
雑に書かれた地図通り 路地裏を歩いていくにつれて
うすぐらく じめじめした小道へと入っていった

本当にこんなところに あるのか・・・?

僕は 半ばあきらめがちに 歩いていた

さらにしばらく歩いた頃

小道はやがて行き止まりとなった

いや、正確には行き止まりではなく

奥に何か”店らしきもの”があった

それは 田舎の小さなタバコ屋の店先のような風体だった

僕は そのまま近づいていく

路地に面したカウンター

中は真っ暗だ

カウンターの上には 店主を呼ぶための呼び鈴が置かれてあった


”チン・チン”

路地に小さく響き渡る


しばらくすると、奥から一人の老人がのそのそと出てきた

老人はめんどくさそうに カウンターの奥の椅子に腰をおろしたが無言だった

僕はしばらく 老人が何か話すのかと思って期待してみていたが

何も話さない

たまりかねて僕から離した


「あの。ここは・・・」


老人は ひびの入っためがねを 軽く上に上げて 僕をにらみつけて言った


「いつの分かね。」


「え?」


老人はひとつため息をつくと、カウンター横の棚の中から

紙の束のようなものを取り出した

その束は いかにも古く ところどころ 虫がくっていたし、日に焼けたように

黄色味がかっていた


「今んとこあいてるのは・・・10月12日、12月23日、来年の1月31日、3月22日」

老人は 紙の束をペラペラめくりながら 月日を読み上げた

「5月5日。ああこれは子供の日だから大変だな。それから・・・・」


「ちょ、ちょっと待ってください。それは一体?」


老人は読み上げるのをやめ、再びめがねを軽く持ち上げて僕をにらんだ


「お前さん、乗るんじゃないのかい?」

「乗るって・・・一体。」

「こりゃこまったな。知らずにここにきたのか?

「いや・・・銀河鉄道の話は聞いてます。でも何の事か・・・」

「ほほう。それはかわいそうに。詳しく話しも聞かずにここまできたとは。」

老人は そう言うと また一つため息をついて

カウンター横の 木製の傷んだ扉をゆっくりと開けた

「今日はもう店をしまうから入れ。」

僕は 同じことを2度言われてから やっと扉の中へと歩いた

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続きはWebで
  • 和尚 さん |
  • 2009/03/17 (21:14) |
  • Edit |
  • 返信
うわ
なにこれ。
すごい好きだ。
  • たこ さん |
  • 2009/03/17 (22:48) |
  • Edit |
  • 返信
>re
>和尚さん
ただいま 爆発では
この小説の続きを募集しております。
応募は WEBにて。
いや、誰かおくってくれないかなw

>たこさん

ふふん。ありがとう。
基本ジメジメ路線は変わりが
ありませんぜ
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